【ALBUM】 Ballads -anthology of early years-

【ALBUM】 Ballads
-anthology of early years-

高田漣のアーリーイヤーズを俯瞰するベスト盤。
未発表ライブ盤含む2枚組。


収録曲


Disc1
Produced by 鈴木惣一朗
Compile&LinerNotes by 星野源

Disc2
LIVE at 南青山マンダラ / 2003年6月5日
高田漣:Pedal Steel
桜井芳樹:Guitar
山本哲也:Keyboards
鈴木惣一朗:Drums


丁寧と寡黙の人

(高田漣ベストのリリースに寄せて、個人的な感慨の文章を書かせていただきます。CD本体には、星野源さんの文章がしっかり掲載されますので、そちらを正式なライナーとして。こちらは難あれどお許しいただきたい。)

あれは、2001年の暮れ、僕が独立しようか迷っていた頃、鈴木惣一朗さんが訪ねてきた。
当時惣一朗さんがメンバーだったノアルイズ・マーロン・タイツのCDを大手事務所の中にレーベルを作ってリリースしていた僕は、そのレーベルごと独立を企てていて、いろんなアーティストを求めていたところだった。惣一朗さんが話してくれたのは、新人・高田漣のソロアルバムの企画だった。縁というものは、不思議なもので、このとき、このタイミングでお話をいただき、それを大切に思い、なんとか独立も果たし、様々な人々の励ましとお力添えと果てしない暖かい気持ちによって、会社も設立して早々に、高田漣ファーストソロアルバム「LULLABY」が世に出ることに相成った訳である。

本当にお金のない貧乏なレーベルで、アー写は友人のカメラマンに石神井公園ロケを敢行してもらった。4月の行楽日和の朝、漣君は遅れずにちゃんと石神井公園に来てくれてそれがとっても嬉しかったことを思い出す。撮影中もずっと寡黙にとりくんでいただいた。
また、会社設立の目処が立つか立たないかという危うい中、録音だけは順調に進んでいて、そんなスタジオにお邪魔して、漣君のペダルスティールの写真を何枚か注文書用に友人から借りたデジカメで撮らせてもらった時も、漣君は、本当に丁寧に楽器の説明をしてくれて、ポーズもいやがらずにとってくれたのを、ありがたい気持ちで思い出す。

まだ会社もできたてで、事務所も練馬の自宅1DK。せっせとサンプルをPowerBookG4で手焼きしていた頃、「LULLABY」レコ発のインストアを渋谷タワー5階で行なった日のことは忘れられない。7月上旬の暑い日、なんだか昼間っからビール臭い惣一朗さん率いるバンドの素晴らしい演奏に、ひととき、渋谷がこの世の楽園に様変わりし、終了後の居酒屋でのビールがまたうまくて、それでもその日まだまだコピー作業をしなければならなくて僕は早々に渋谷を後にしたのだが、漣君は車なので、ほとんどお酒を口にしていなかったようです。

その後、nowgomix Recordsの看板バッターとして計3枚のアルバムを作ってくれた漣君。毎回、惣一朗さんと必要最小限の打合せのみで制作が進行し、出来た3枚どれもが傑作!という離れ業をやってくれた。離れ業の秘密は、漣君の丁寧な部分と、寡黙な部分が非常にうまく機能したことによるのではないかと思えるのだ。

ファーストでは、惣一朗さんの「子どもの頃から子守歌代わりに聴いたシンガーソングライター達の曲をカバー」し、タイトルは「LULLABY」という非常に明快かつやや強引なコンセプトがズバリ的中したわけだが、これは漣君が丁寧かつ寡黙に惣一朗コンセプトに対応した結果だと思われる。

またセカンドは、鈴木惣一朗(ドラム)、桜井芳樹(ギター)、山本哲也(キーボード)そして高田漣というファーストからのメンバーが幾多のセッションを経て、ある意味バンドとしてのピークを迎えた時期に録音された。(その状況は当ベスト盤DISC2のライブをお聴きいただければご納得いただけるここと思う)そんな中、漣君はやはり丁寧にミュージシャンの演奏に応え、かつ寡黙に自分の持ち場を全うしている。

そして、問題のサード。現時点での最新作「12notes」への布石となったかのような歌ものへの接近と、テクノ/ニューウェイヴ好き要素が垣間見える。ところが「Domino438」などにはそうした新要素を全てはぎ取った強固な漣ワールドが刻み込まれている。ここでも漣君は丁寧にその時を演奏し、寡黙に音楽に向かっているのだ。

そうなのです。高田漣というミュージシャンは(あくまでレーベルサイドから見た話ですが)丁寧さと寡黙さによって音を紡いでいる人なのです。そのあたたかい人柄に出会えたことを、惣一朗さんとまわりのミュージシャンの皆様に感謝しつつ、今回、こうしてめでたくベスト盤をリリース出来ることを、これまた、関わっていただいた全ての皆々様に感謝の気持ちを込めて御礼申し上げる次第であります。

nowgomix Records / SUZAK MUSIK 平田和彦


高田漣 プロフィール

1973年、日本を代表するフォークシンガー・高田 渡の長男として生まれる。少年時代はサッカーに熱中し、14歳からギターを始める。17歳で、父親の旧友でもあるシンガーソングライター・西岡恭蔵のアルバムでセッション・デビューを果たす。現在は、スティール・ギターをはじめとするマルチ弦楽器奏者として細野晴臣、高橋幸宏、などのレコーディングやライヴで活躍中。ソロ・アーティストとしても今までに5枚のアルバムをリリース。
その他、青柳拓次、伊藤ゴローとの共同プロジェクト、通称『御三家』シリーズ、SAKEROCKとASA-CHANGとのユニット『サケロックオールスターズ』等、幅広く活動中。2007年春~プリングルズ グルメ、ヱビス<ザ・ホップ>のTVCMに出演。同年夏、高橋幸宏の新バンド構想の呼びかけにより、原田知世、高野寛、高田漣、堀江博久、権藤知彦の計6人で「pupa」結成。2008年7月、デビュー・アルバム『floating pupa』をリリース。同年、崔洋一監督によるショートフィルム「ダイコン」(小泉今日子主演)の音楽を担当。同年6月、英・ロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールで開催された『メルトダウン・フェスティバル』にYellow Magic Orchestraのサポート・メンバーとして出演。

高田漣オフィシャルHP